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最高裁判所第二小法廷 昭和51年(あ)1018号 決定

本店所在地

大阪府堺市北花田町三丁一六二番地

浅井鉄工

株式会社

右代表者代表取締役浅井三秀

右の者に対する法人税法違反被告事件について、昭和五一年五月二七日大阪高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人土橋忠一の上告趣意は、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田豊 裁判官 本林譲 裁判官 栗本一夫)

被告人 浅井鉄工株式会社

昭和五一年(あ)第一〇一八号

上告趣意書

右の者に対する法人税法違反事件について上告趣意を次のとおり述べる。

一、原判決は被告人に対し第一審の判決を破棄し、罰金四〇〇万円に処する旨の判決をしたが、右判決はなお刑の量定が苛酷に過ぎ、破棄を免れないものである。

二、刑の量定が甚だしく不当であることの理由について

(1) 被告人浅井鉄工株式会社は昭和四三年五月二五日に設立され、金属の加工、販売等を目的とする資本金僅かに一〇〇万円の株式会社であり、その代表取締役浅井三秀を中心とする同族会社である。

(2) 以上のとおり被告人浅井鉄工株式会社は設立後日浅く、資産としては全くみるべきものがなく、いわゆる含みに乏しい上に、最近は機械部品下請会社の不況がなお厳しく、その営業の上においても欠損続きで未だ利益をあげるに至っていないのである。

(3) 右のような被告人浅井鉄工株式会社にとって、罰金四〇〇万円の支払は、その余力がなく、その支払を即時に強制されるならば倒産を招くよりほかないのが現状である。

(4) しかも被告人浅井鉄工株式会社は青色の取消し、多額の重加算税、延滞金等の支払を余儀なくさせられ、これとても当局のはからいで分割納付を認められているものの、なお多額の支払残をかかえている現状であり、これに罰金の即時支払を強制されるならば、まさに致命的な打撃を受けることになるのは明らかである。

(5) そもそも法律は会社更生法等においては窮況にある会社を救済しようとしながら、一方税法違反の会社に対しては極めて冷酷であるのは遺憾である。たとえそれが税法違反の会社であっても、その会社を更生させ、従業員をして安心して生活の途を得せしめるよう深甚の配慮が願わしいのである。

三、結論

以上のとおり原審が一審判決の罰金六五〇万円を罰金四〇〇万円に変更されたのは一応の温情を示されたものとして、高く評価されるのであるが、右の罰金四〇〇万円といえども、なお被告人浅井鉄工株式会社にとっては苛酷に過ぎ、甚だしく不当な刑罰と言うべきであるから、原審の判決は破棄を免れないものである。

昭和五一年七月二四日

右弁護人 土橋忠一

最高裁判所第二小法廷 御中

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